MRIの性能表示ではテスラという国際単位を用います。テスラは磁場の大きさを表す単位です。現在、普及しているMRIは0.2テスラから3テスラまでですが、さらに強い磁場を発生する装置まで、実用化されています。

一般に、テスラが上昇するほど、画質が上昇し、検査時間が短縮されます。しかし、これは、検査を受ける人の体に何も異物が入っていない生まれたままの状態であればの話です。身体に金属が入っていると、テスラが上昇するにしたがい、金属の影響を強く受け、結果的には画質が劣化してしまうのです。頭部に関しては、歯科治療に用いた金属が最も問題となります。歯科治療に用いた金属は3、40年まえに治療を受けたものも珍しくはなく、これらの部材が検査の支障になります。最近では、体に使用する金属には、MR SafeもしくはMR Compatibleと表示がされている材料が増えています。MR Safe(安全)とはMRI装置には入っても危険がないとの表示であり、MR Compatible(対応)はMRI装置に入っても、画質に全く影響がないとの表示です。今後、歯科治療などで金属などを入れる場合は、MR Compatibleと表示のある部材を使ってもらうことをお勧めします。

また、磁場が上昇すると、身体に違和感を感じる場合があります。3テスラのMRI検査では、めまいなど磁場酔いを生じ、気分不良を感じる方が少なくなくありません。その一方、期待するほど画質化が向上しているわけでもありません。1.5テスラに対し3テスラにすると、倍の情報量が得られわけではなく、患者によっては逆に画質が劣化する場合もあります。

現時点では、健康被害も考慮し、また、画質の優劣を考慮しても、1.5テスラのMRI装置がベストの選択と個人的には考えております。3テスラでできる検査は、1.5Tの装置でもできるからです。当院に導入した最新型GE社製Optima MR360 1.5TはGE社製の3テスラ装置で使用する画像ソフトのすべてが使用可能です。

現在、全世界はエコロジーに向かっていますが、医療器具メーカーは逆で磁場を上げる方向に向いています。これでは使用電気量が上昇し、世の中の流れに反しています。また、どのくらいの磁場までが、人体にとって影響がないかははっきりしていません。1.5テスラまでの磁場の健康への影響のデーターはすでに蓄積はできているため、安全性が確立している1.5テスラまで、あるいは、むしろ、1テスラ程度の磁場にとどめ、画質を向上されることが、真の技術革新ではないかと個人的には考えます。