1)脳梗塞

  1. 内科的治療(脳血管内外科医がいない場合)
    脳梗塞の症例は、全例脳保護剤(商品名ラジカット)の点滴を行い、脳 血栓の場合は、抗血栓剤(オザグレルナトリウム)の点滴治療を追加し ます。脳塞栓の場合は、抗凝固剤(ヘパリン)の点滴治療を追加します。 先進的な内科では、更に血栓溶解剤(t-PAもしくはpro-UK) の点滴治療を行います(ここまでやる内科は少ないと思われます)。
  2. 脳血管内外科的治療
    脳保護剤の使用、抗血栓剤および抗凝固剤の使用は、内科的治療と同様 です。しかし、血栓溶解剤の使用方法が違います。脳血管内外科医が待 機している施設では、マイクロカテーテルと呼ばれる極めて細い管を閉 塞している血管(血栓がつまってる部位)まで挿入し、血栓のすぐそば で高濃度の血栓溶解剤を注入し、つまっている血管を開きます(この治 療は、発症から長時間が経過すると行うことが出来ません)。
    飯塚病院では、この治療法を平成2年から全国に先駆けて行い、脳梗塞 の治療成績の向上を得ることが出来ました。その成果は、平成4年の日 本脳神経外科学会総会に発表しております。

2)脳出血
血圧を厳重にコントロールして、再出血の予防に努めます。血腫が大き い場合は、開頭して血腫を除去したり、骨に小さな穴を開けて血腫に管 を挿入し、吸引治療を行います。しかし、脳出血に対する効果的な治療 法はなく、最初の出血の部位、血腫の大きさで、その後の経過が決まっ てしまいます。

3)くも膜下出血
動脈瘤破裂によって生じる出血です。多くの患者は、一度破れた後、動 脈瘤の回りに血溜まり(血腫)ができて、一時的に止血されます。この 時期に治療を行うことが重要で、再度、出血を生じた場合は、経過が更 に悪化します。 治療は、出来るだけ早期に破裂した動脈瘤への血流を遮断することです。 血流を遮断する方法として、開頭手術と脳血管内手術があります。

  1. 開頭手術
    骨を外し、動脈瘤を露出させ、動脈瘤の首に金属クリップをかけて、動 脈瘤への血流を遮断します。
  2. 脳血管内手術
    足の付けの動脈からマイクロカテーテルという極めて細き管を体の血管 内に入れ、その先端を動脈瘤内へ挿入します。そのマイクロカテーテル からGDCと呼ばれるプラチナ性のコイルを動脈瘤内腔に挿入し、動脈 瘤の内腔をコイルでパッキングして、血流を遮断します。 飯塚病院では、平成3年1月に日本で初めて、このGDCを用いた脳動 脈瘤手術を施行し、治療に成功しております。その後、9割を越える確 率で、治療に成功しています。